【Google「Gemini 4 Argon」発表】最大100万トークン出力、コーディング・法務・サイバー防御を強化

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Googleは2026年10月1日、新たなフロンティアAIモデル「Gemini 4 Argon」を発表した。

Gemini 4 Argonは、複雑かつ長時間にわたるワークフローで深い推論を持続できるよう設計された新モデル。実世界のソフトウェアエンジニアリング、法務・財務などの企業ナレッジワーク、サイバーセキュリティを重点領域としており、Google社内ではすでに数千人規模で活用されているという。

特に大きな進化となるのが出力量だ。従来の6万4,000トークンから大幅に拡大し、1回の処理で最大100万トークンを出力可能とした。

一方、発表時点では一般ユーザーへ全面公開されておらず、まずは「Fairwind Program」を通じて一部の信頼できるサイバーセキュリティ担当者へ展開。Googleは安全性を検証したうえで、開発者、企業、一般ユーザーへ順次提供を拡大する方針だ。

Gemini 4 Argonは「長時間考え続ける」フロンティアモデル

Gemini 4 ArgonでGoogleが重視しているのは、単発の質問に対して素早く回答する能力だけではない。

複数のステップを必要とする複雑な作業を、長時間にわたって継続的に処理する能力が大きな特徴となる。

例えば大規模なソフトウェア開発では、コードを生成して終わりではなく、既存コードの調査、問題点の特定、修正、テスト、パフォーマンス検証、再修正といった一連のプロセスが必要になる。

企業の財務調査や法務業務でも同様に、複数の資料を確認し、それらを関連付けながら分析し、最終的な成果物へまとめる必要がある。

Gemini 4 Argonは、こうした「長く、複雑で、多段階な仕事」そのものをAIへ任せることを想定したモデルとして開発されている。

出力上限を6万4,000から「100万トークン」へ大幅拡大

Gemini 4 Argonを象徴するスペックが、最大100万トークンの出力上限だ。

Googleによると、従来モデルでは6万4,000トークンだった出力上限を、Gemini 4 Argonでは100万トークンまで拡大した。

これは単純に「非常に長い文章を書ける」というだけではない。

AIが1つの問題を処理する過程で、数十万トークン規模の推論や生成を1つの連続した処理として維持できる余裕を持たせることが狙いだ。

Googleは、この拡張によってモデルがより深く思考し、従来であれば複数回に分ける必要があった困難な問題を、1つのプロセスの中で解決できる可能性が高まるとしている。

なお、今回Googleが100万トークンへ拡張したと説明しているのは、入力を保持する「コンテキストウィンドウ」ではなく、モデルが生成できる「出力トークン上限」である。

ここはGemini 4 Argonを理解するうえで重要なポイントだ。

Google社内ではすでに数千人が利用

Gemini 4 Argonは発表段階の実験モデルというだけではなく、すでにGoogle社内の実際の業務フローへ投入されている。

Googleによると、数千人の社員がArgonを利用しており、専門的なコーディング、深いリサーチ、高品質な文章作成などで強みを発揮しているという。

活用事例のひとつが量子コンピューティングだ。

Googleの量子コンピューティング研究では、重要なアプリケーションのボトルネックとなるサブルーチンについて、量子ビットとゲートを組み合わせた時空間リソースをArgonで最適化。

あるケースでは、公開されていた基準値をわずか数分で40%上回ったとしている。

データセンターでは300TiB以上のメモリを解放

AIによる実際のインフラ最適化にも利用されている。

GoogleではArgonエージェントのチームが、データセンター全体から収集されたプロファイリングテレメトリを分析。

メモリ使用量を改善できるポイントを自律的に特定し、その最適化を適用した。

その結果、展開後には300TiB以上のメモリを解放。Googleは最終的に500TiB~1PiB規模の削減効果を見込んでいる。

生成AIが文章や画像を作るだけではなく、巨大なコンピューティングインフラそのものを解析し、改善策を導き出す段階へ入っていることを示す事例といえる。

C/C++からRustへ。80万行超のコード移行にも投入

Gemini 4 Argonが特に重視する領域のひとつが、ソフトウェアエンジニアリングだ。

GoogleではArgonエージェントを使い、既存のC/C++コードベースをRustへ移行する取り組みを進めている。

対象規模は、re2やlibgav1といった数万行規模のコアライブラリから、Fuchsia OSのZircon kernelにおける80万行超のコードまで及ぶ。

ただしGoogleは、AIによって生成・変換されたコードをそのまま本番投入しているわけではない。

重要なシステムについては、自動テストに加えて人間による監査、エミュレーションテスト、レビューなどを実施したうえで展開している。

「AIがコードを書く」から「AIエージェントが大規模なコードベースを移行・最適化する」段階へ進んでいる点が大きな変化だ。

動画デコーダではRust版を2.7倍高速化

映像分野でも興味深い成果が公開されている。

Googleのオープンソース動画デコーダ「libgav1」では、Argonエージェントが既存のRust移植版を解析。

プロファイルガイド付きの実験を繰り返し、コンパイラの出力を確認しながら、約3万2,000行のSIMDコードを置き換えた。

その結果、生成されたメモリ安全なRust版動画デコーダは、従来のRust移植版と比較して2.7倍高速化。

しかも動画出力は同一に保ちながら、最適化されたC++版に近い性能まで到達したという。

AIによるコード生成だけではなく、コンパイラの挙動や実際の実行性能まで評価しながら反復的に最適化するという、よりエージェント的な使い方が行われている。

ソフトウェア開発「DeepSWE v1.1」で77.9%

GoogleはGemini 4 Argonについて、複数のベンチマーク結果も公開した。

実世界に近い長時間のソフトウェアエンジニアリング能力を評価する「DeepSWE v1.1」では77.9%を記録し、新たな最高記録を更新したとしている。

また、財務・コーディング・法務・税務などの経済的価値を測定する「Vals Index」でもトップに位置した。

多段階の財務リサーチを評価するVals Finance Agent v2、法務リサーチや文書作成能力を測定するHarvey’s Legal Agent Benchmarkでも高い性能を示したという。

企業業務の自動化能力を評価するZapierの「AutomationBench」では、51.3%で1位を記録している。

長尺動画の理解「LVBench」で91.7%

Geminiシリーズが以前から強みとしてきたマルチモーダル能力も強化されている。

Gemini 4 Argonでは、文章やコードだけでなく、画像、チャート、動画などを組み合わせた情報を理解できる。

例えば、

・専門的なチャートの分析
・長尺動画から特定の情報を発見
・複数ドキュメントを横断して情報を抽出
・抽出した情報をもとに次のアクションを実行

といった処理が可能とされる。

長尺動画の理解能力を評価するLVBenchでは91.7%を記録した。

映像制作の現場で考えれば、将来的には数時間規模の収録データをAIへ渡し、必要なシーンの特定、内容の分析、文字起こし、編集候補の抽出までを連続的に処理するといった用途にもつながる可能性がある。

サイバーセキュリティでは脆弱性を「発見・検証・修正」

Gemini 4 ArgonでもうひとつGoogleが強く訴求しているのが、サイバーセキュリティだ。

Argonは重要なソフトウェアについて、脆弱性を自律的に発見、検証し、さらにパッチを作成・適用する能力を持つという。

Googleは一部のセキュリティ担当者や社内チームに対して、フロンティアレベルの性能を活用できる特別な環境でArgonを提供している。

クラウドセキュリティ企業Wizでは、「Scan for Good」の取り組みを通じてArgonを活用。

初期デモでは、世界中の病院で利用されている医療ソフトウェアから、これまでのフロンティアモデルでは見落とされていた重大な脆弱性を発見したとしている。

脆弱性修復「CWE-bench v1」で68%

セキュリティ脆弱性の修復能力を評価する「CWE-bench v1」では、Gemini 4 Argonが68%を記録し首位タイとなった。

Google内部の脆弱性評価では、20種類のプログラミング言語にまたがる複雑なコードベースから幅広い問題を発見したという。

さらに、ソースコードを与えず稼働中のWebシステムを解析するWizのブラックボックス・ペネトレーションテストでも、従来の「Gemini 3.8 Flash Cyber」を上回ったとしている。

単にセキュリティに関する質問へ回答するのではなく、対象システムを調査し、脆弱性を探し、証拠を生成し、修正まで進めるAIエージェントとしての性能が重視されている。

強力すぎる能力ゆえに「段階的公開」

一方で、サイバーセキュリティに強いAIは防御だけでなく、悪用されれば攻撃側にも利用される可能性がある。

そのためGoogleは、Gemini 4 Argonを発表と同時に一般公開するのではなく、段階的にアクセスを拡大する方針を採用した。

発表時点では「Fairwind Program」を通じて、信頼できるサイバーセキュリティ担当者へ順次提供している。

Googleは米国政府によるモデルの事前アクセスに関する自主的なプロセスにも参加し、初期ユーザーからフィードバックを収集しながら安全対策を強化する。

プロンプトインジェクション耐性も強化

GoogleはGemini 4 Argonの一般提供に向け、複数の安全対策を強化している。

そのひとつが間接的プロンプトインジェクションへの防御だ。

Webページや文書などに悪意ある命令を埋め込み、AIエージェントへ意図しない操作を実行させる攻撃は、外部情報へアクセスして自律動作するAIにとって大きなリスクとなる。

Googleによると、Gemini 4 Argonは同社モデルの中でこれまでで最も高い耐性を持ち、Gray SwanのIndirect Prompt Injectionベンチマークでもトップクラスの堅牢性を示したとしている。

さらに、モデルがユーザーの意図から逸脱した行動を取らないよう、推論やアクションを監視し、必要に応じて実行を停止する仕組みも導入されている。

API価格は100万入力トークン2ドル、出力10ドル

開発者にとって注目したいのがAPI料金だ。

Googleによると、Gemini 4 Argonは導入価格として、

100万入力トークン:2ドル
100万出力トークン:10ドル

で提供される予定。

さらにキャッシュ済み入力トークンは通常の入力料金から95%OFFとなる。

長大なコードベースや大量の企業文書を何度も参照するAIエージェントでは、同じ情報を繰り返し入力するケースが多いため、キャッシュ料金の設定は実運用コストに大きく影響しそうだ。

現時点では一般ユーザーはまだ利用できない

注意したいのは、Gemini 4 Argonが発表されたからといって、現在すべてのGeminiユーザーが利用できるわけではないという点だ。

Googleは現在、Fairwind Programを通じたサイバーセキュリティ関係者や初期テスターを中心に段階的な提供を行っている。

今後は、有料APIユーザーやGoogle AI Ultraユーザーを含む開発者、企業、一般ユーザーへの本格展開を予定しているが、具体的な一般提供日は発表されていない。

したがって現段階では、Geminiアプリを開けば「Gemini 4 Argon」をすぐ選択できるという状態ではない。

Gemini 4 Argon主要ポイント

項目Gemini 4 Argon
モデルGoogle Gemini 4 Argon
発表2026年10月1日(日本)
主な用途コーディング、企業ナレッジワーク、サイバーセキュリティ
出力トークン上限最大100万トークン
従来の上限6万4,000トークン
DeepSWE v1.177.9%
AutomationBench51.3%/1位
LVBench91.7%
CWE-bench v168%/首位タイ
API入力料金100万トークンあたり2ドル
API出力料金100万トークンあたり10ドル
キャッシュ入力入力料金から95%OFF
現在の提供Fairwind Programなど初期ユーザー中心
今後API、企業、Google AI Ultra、一般ユーザーなどへ拡大予定

「回答するAI」から「仕事を最後まで進めるAI」へ

Gemini 4 Argonの進化をスペックだけで見るなら、最大100万トークンの出力上限や各ベンチマークの数字が目を引く。

しかし、今回の発表でより重要なのは、GoogleがAIを「質問に回答するモデル」ではなく、「長時間の仕事を継続して遂行するエージェント」へ本格的に移行させていることだろう。

80万行を超えるコードベースの移行、データセンターのメモリ最適化、複数段階の金融調査、法務文書の作成、長尺動画の解析、さらにはソフトウェア脆弱性の発見から修正まで。

これらはいずれも、短いプロンプトに対して短い回答を返す従来型チャットAIとは大きく異なる。

Gemini 4 Argonは、人間が数時間、数日、場合によってはさらに長い時間をかけて進めてきた複雑な業務フローそのものをAIへ渡すことを見据えたモデルといえる。

Googleは安全性の検証を続けながら、今後、開発者・企業・一般ユーザーへArgonの提供を拡大する予定だ。

一般ユーザーがGeminiアプリで利用できる時期や、Google Workspace、Android、Pixelなど既存Googleサービスへどのように組み込まれていくのかも、今後の焦点となりそうだ。

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