- 2026年7月8日
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Hollylandから、7インチのワイヤレス映像伝送モニター「Pyro 7 Ultra」が登場した。
Pyro 7 Ultraは、7インチモニターにトランスミッター(TX)とレシーバー(RX)の機能を統合したオールインワンモデル。従来の「Pyro 7」が持っていた“モニターそのものを送信機・受信機として使う”コンセプトを継承しながら、QD-LCD、ΔE≤1.5の色精度、最大1kmの伝送距離、4K60、Focus Mode時の最小20ms低遅延、1TX+無制限RXなど、モニタリングとワイヤレス伝送の両面を大幅に強化した。
2026年9月4日には国内での販売も開始され、販売価格は228,624円(税込)。撮影監督、カメラオペレーター、フォーカスプラー、DIT、ディレクターなど、複数スタッフで映像を共有するプロダクションを強く意識したモデルとなっている。

撮影現場でワイヤレス映像伝送を構築する場合、一般的にはカメラ側に送信機、監督やクライアント側に受信機とモニターを用意する。
システムとしては確実だが、機材点数は増える。
バッテリー、ケーブル、モニター、送受信機、それぞれのマウントまで含めれば、現場が大きくなるほどセットアップも複雑になる。
Pyro 7 Ultraが狙うのは、その構成をできるだけシンプルにすることだ。
本体そのものがTX・RX・7インチモニターの3役を担うため、カメラ側では送信機兼オンカメラモニター、離れた場所では受信機兼ディレクターズモニターとして使用できる。
撮影内容に応じて役割を切り替えられる点は、機材量を抑えたい少人数チームから複数モニターを必要とする中〜大規模プロダクションまでメリットが大きい。
Hollylandは、Pyro 7 Ultraをオンカメラモニタリング、フォーカスプル、モバイルディレクターモニタリングなどを1台でカバーするシステムとして位置付けている。
ワイヤレス性能も従来のPyro 7から大きく進化した。
Pyro 7 Ultraでは、Hollyland独自のTWiFi(Twin-WiFi)を採用する。
2.4GHzと5GHzのデュアルバンドを利用し、混雑しているチャンネルを避けるため自動で周波数を切り替える設計。イベント会場や撮影スタジオなど、多数のワイヤレス機器が存在する環境での安定性を重視している。
最大伝送距離は3,300ft=約1km。
従来のPyro 7は最大400mだったため、公称値ベースでは伝送距離が大きく伸びたことになる。
1kmというスペックだけを見ると大規模な屋外撮影が思い浮かぶが、実際の制作現場では必ずしも“1km離れて使う”ためだけの性能ではない。
スタッフ、観客、壁、ステージ設備、多数のWi-Fiアクセスポイントなどが存在する環境では、短い距離でも無線状況は厳しくなる。
ライブイベント、スポーツ、音楽フェス、式典、舞台収録などでワイヤレス映像伝送を使う場合、通信距離の余裕そのものがリンクの安定性を確保するうえで重要な要素になる。

Pyro 7 Ultraには、遅延を抑えるFocus Modeも搭載される。
Hollylandの公称値では、標準テスト条件において1080p25/30伝送時で最小20ms。1080p60では最小40ms、4K60では最小45msとしている。
従来のPyro 7は1080p60伝送時で約60msだったため、低遅延性能についても改善が図られた。
ワイヤレスモニターの遅延は、単に「映像が少し遅れて見える」というだけではない。
特にフォーカスプラーがワイヤレス映像を見ながらレンズを操作する場合、被写体の動きに対して表示が遅れるほどフォーカス操作も難しくなる。
Pyro 7 UltraではTiltaとの協業により、Nucleus-M II Wireless Lens Control Systemとの互換性も確保。Hollyland自身がフォーカスプラー用途を重要なワークフローのひとつとして位置付けていることが分かる。

入出力にはHDMI 2.0と3G-SDIを搭載する。
HDMIでは最大4K60の入力および出力に対応。SDIは3G-SDIとなるため最大1080p60が中心となるが、HDMIとSDI間のクロスコンバージョンにも対応している。
旧Pyro 7ではHDMI 1.4bを採用し、HDMI入力は最大4K30だった。
そのため、4K60で収録するミラーレスカメラやシネマカメラとの組み合わせでは、Pyro 7 UltraのHDMI 2.0化は大きな変更点になる。
カメラから4K60信号をそのまま入力できるため、フレームレートを落とすためだけにカメラ側の映像出力設定を変更する必要性も減る。
スポーツ、ライブイベント、アクション撮影など60fpsを多用する現場との相性は特に良さそうだ。

Pyro 7 Ultraを象徴する機能のひとつが、1TX & Unlimited RXだ。
Broadcast Modeでは、1台の送信機から複数の受信機へ映像を送信でき、Hollylandは受信台数を「Unlimited」としている。
従来のPyro 7は1TX+最大4RXだったため、システムの拡張性は大幅に高まった。
例えば映画やCMの撮影現場なら、
といった複数セクションで同じカメラ映像を共有できる。
ライブイベントでも、ステージ袖、配信卓、ディレクター席など複数拠点へ映像を展開しやすい。
従来は受信機数の上限を考えながらシステムを構築する必要があったが、Pyro 7 Ultraではワイヤレスモニタリングを“チーム全体へ広げる”方向へ進化した。
なお、無制限RXはBroadcast Mode使用時の仕様となる点には注意したい。

今回のUltraで特に注目したいのがディスプレイだ。
7.02インチ、1920×1200ピクセル、最大輝度1,500nitsという基本スペックに加えて、新たにQD-LCD(Quantum Dot LCD)を採用した。
色域はRec.709 99%以上、DCI-P3 95%以上。コントラスト比は1000:1、ガンマ2.4に対応する。
さらに各Pyro 7 UltraはCalmanによる工場キャリブレーションが行われ、色差はΔE≤1.5を実現するとしている。
ここは旧Pyro 7との大きな方向性の違いだ。
ワイヤレス映像伝送モニターはこれまで、フォーカスやフレーミング、クライアント確認など「撮れている映像を確認する」用途が中心だった。
Pyro 7 Ultraでは色再現性にも踏み込み、露出やフォーカスだけでなく、色を判断するためのモニターとしての信頼性を高めようとしている。
もちろん、本格的なリファレンスモニターを完全に置き換える製品かどうかは実機検証が必要だ。
それでもΔEやDCI-P3カバー率を明示し、全台をキャリブレーションした状態で出荷するという設計は、従来モデルから明確にプロフェッショナル志向が強まった部分といえる。
ディスプレイは使用時間や経年変化によって表示特性が変化する。
Pyro 7 Ultraでは、別売のHollyland Color CalibratorをUSB-Cで接続することで、PCを使用せずモニター単体で再キャリブレーションできる。
Hollylandによると作業時間は約3分。
複数台のPyro 7 Ultraを現場で使用する場合、それぞれのモニターで色味が異なると判断基準そのものが変わってしまう。
特に監督、撮影監督、DITなど複数人で同じ映像を確認するワークフローでは、モニター間の表示を揃えやすいこと自体が運用上のメリットになる。
OSにはHollylandのHollyOSを搭載する。
映像解析機能として、
Waveform、Histogram、Zebra、False Color、Focus Peaking、LUT、Anamorphic、Aspect、Safety Frame、Image Overlay、Gridなどを利用できる。
撮影時に使用頻度の高い機能を一通りカバーしているため、別途オンカメラモニターを追加しなくても、露出、フォーカス、フレーミングをPyro 7 Ultra上で確認できる。
また、カスタマイズ可能なテンプレートにも対応しており、例えばカメラオペレーター用、フォーカスプラー用、ディレクター用といった形で用途に応じたモニタリング環境を作り分けることもできる。
Pyro 7 Ultraはカメラコントロールにも対応する。
国内販売開始時の発表によると、Sony、Canon、Nikon、ARRIの一部対応カメラで、シャッター、絞り、ISO、ホワイトバランスなどを操作可能としている。
モニターを見るためにカメラの近くまで戻る必要がないだけでなく、対応機種との組み合わせでは離れた場所からカメラ設定そのものを変更できる。
ジンバル、クレーン、車載カメラ、離れた位置に設置した固定カメラなど、カメラへ直接アクセスしにくい撮影では特に有効だろう。
電源周りにもプロ向けらしい変更が加えられている。
Pyro 7 Ultraは本体背面にVマウントバッテリープレートを標準搭載。DC入力にも対応し、電源電圧は10〜28V。
旧Pyro 7はNP-Fバッテリープレートが標準で、VマウントおよびGマウントはオプションとして用意されていた。
本体消費電力はTXモード時最大25W、RXモード時最大20W。
Vマウントを標準とすることで、長時間撮影を前提としたカメラシステムやディレクターズモニターへ組み込みやすくなった。
一方、本体重量は630g以下。旧Pyro 7は約570gだったため、Ultraでは機能強化と引き換えに若干重量が増えている。
主なスペックを比較すると、今回の進化が分かりやすい。
| 項目 | Pyro 7 Ultra | Pyro 7 |
|---|---|---|
| ディスプレイ | 7.02インチ QD-LCD | 7インチ LCD |
| 解像度 | 1920×1200 | 1920×1200 |
| 最大輝度 | 1,500nits | 1,500nits |
| 色精度 | ΔE≤1.5 | ― |
| Rec.709 | 99%以上 | ― |
| DCI-P3 | 95%以上 | ― |
| HDMI | HDMI 2.0 | HDMI 1.4b |
| HDMI最大入力 | 4K60 | 4K30 |
| SDI | 3G-SDI | 3G-SDI |
| 最大伝送距離 | 1km | 400m |
| 最小伝送遅延 | 20ms※ | 約60ms |
| RX接続 | 1TX+無制限RX※ | 1TX+4RX |
| 無線 | TWiFi 2.4GHz+5GHz | ADH 2.4GHz+5GHz |
| バッテリー | Vマウント標準 | NP-F標準 |
| 重量 | 630g以下 | 約570g |
※Focus Modeおよび所定のテスト条件による。無制限RXはBroadcast Mode使用時。
単純に見ると、Pyro 7 UltraはPyro 7の高画質版ではない。
モニター品質、遅延、伝送距離、接続台数、4K対応、電源システムまで含めて、より本格的な制作現場へターゲットを引き上げたモデルと考えた方が分かりやすい。
Pyro 7 Ultraの国内販売価格は228,624円(税込)。
Hollyland日本公式ストアでも同価格で販売されている。
決して安価なオンカメラモニターではない。
しかし、
「7インチモニター」
「ワイヤレスTX」
「ワイヤレスRX」
「Vマウント電源」
「SDI/HDMIクロスコンバージョン」
「高精度モニタリング」
を1台へまとめられることを考えると、単純にモニター単体の価格だけで判断する製品でもない。
個別に送信機、受信機、モニター、それぞれの電源・マウントを構築する場合と比較すると、セットアップの簡略化や機材点数削減まで含めて評価する必要がありそうだ。
なお、国内販売開始時点でシステムファイブは、日本国内で使用可能なPyroシリーズとしてPyro 7 Ultra、Pyro Ultra、Vcoreの3モデルを案内している。
海外向けPyroシリーズを購入する場合は、日本国内で使用可能な仕様かどうかを確認しておきたい。
Pyro 7 Ultraの性能を最も生かしやすいのは、複数スタッフで映像を共有する現場だ。
例えば映画やCM撮影なら、カメラ側のPyro 7 UltraをTXとして使用し、フォーカスプラーや監督側のPyro 7 UltraをRXとして利用する。
イベントやライブ配信では、ステージ上のカメラ映像を離れた配信卓やディレクター席へワイヤレスで送るといった構成も可能だ。
また、1TX+無制限RXによって複数スタッフへ映像を配信できるため、従来ならSDIケーブルを長距離引き回していたようなモニタリング用途をワイヤレス化できる可能性もある。
一方、カメラ1台とオンカメラモニターだけで完結するワンマン撮影では、22万円を超える価格やワイヤレス機能を持て余す可能性がある。
Pyro 7 Ultraは「高性能な7インチモニター」というより、撮影チーム全体の映像共有を構築するためのワイヤレスモニタリングプラットフォームとして見るべき製品だろう。
Hollyland Pyro 7 Ultraは、従来のPyro 7が提示したTX・RX・モニター一体型というコンセプトを、本格的なプロダクション向けへ大きく押し進めたモデルだ。
最大1kmの伝送距離、4K60、Focus Mode時の最小20ms、1TX+無制限RX、QD-LCD、ΔE≤1.5、Rec.709 99%以上、DCI-P3 95%以上。
スペックだけを見ても、従来モデルからのアップデート幅は大きい。
特に重要なのは、ワイヤレス伝送性能だけを強化したのではなく、モニターそのものの色再現性を高めたことだろう。
送信機と受信機を別途組み合わせる従来型のワイヤレス伝送システムに対して、Pyro 7 Ultraなら必要な場所へモニターを配置し、そのモニター同士を直接ワイヤレスでつなぐというシンプルなシステムを構築できる。
カメラオペレーター、フォーカスプラー、監督、DIT、クライアントが、それぞれ同じ映像をリアルタイムで共有する。
Pyro 7 Ultraは、単なるオンカメラモニターではなく、“現場全体で映像を見るためのハブ”へ進化した製品といえそうだ。
国内販売価格は228,624円(税込)。2026年9月4日より国内販売が開始されている。
本記事は、RE EARTH TV編集部がメーカー公式サイト、公式発表、取材内容などの情報をもとに制作しています。
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