- 2021年5月14日
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掃除機、ヘアドライヤー、空調家電など、これまでさまざまなカテゴリーを独自のエンジニアリングで再設計してきたDyson(ダイソン)が、今度は「歯ブラシ」に参入する。
ダイソンは2026年9月1日、フランス・パリでフロッサー付き電動歯ブラシの新製品「Dyson CameraJet(ダイソン カメラジェット)」を発表した。
最大の特徴は、その名前が示す通り、歯ブラシにカメラとジェット機構を組み込んだことだ。
10万画素の小型マクロカメラとAI機械学習技術によって歯と歯の間をリアルタイムで認識。ブラッシングしながら必要な場所へマウスリンスを自動噴射し、通常の歯磨きでは届きにくい歯間までケアする。
日本での販売価格は79,800円(税込)。ダイソン公式サイトでは予約購入を受け付けており、2026年9月11日以降、順次発送予定となっている。
電動歯ブラシとして考えればかなり高価だ。しかしCameraJetは、単にブラシを高速振動させる製品ではない。
「見る」「歯間を判断する」「狙って洗浄する」
この一連の工程をAIとカメラによって自動化した、ダイソンらしい新しいオーラルケアデバイスとなっている。

Dyson CameraJetは、電動歯ブラシ・ウォーターフロッサー・口腔内カメラ・ブラッシングガイドといった複数の機能を1台へ統合したオーラルケアデバイスだ。
ダイソンによれば、開発には6年間を費やし、661人のエンジニアがプロジェクトに参加。38件の特許を出願しているという。
さらに、開発段階では世界各地の30人の歯科専門家と連携し、シンガポール国立大学とも共同で疑似歯垢を開発。単に家電メーカーが電動歯ブラシを作ったというより、かなり大規模な研究開発プロジェクトとして進められてきたことが分かる。
CameraJetが狙ったのは、一般的な歯ブラシでは届きにくい「歯間」だ。
これまではブラッシングとは別にデンタルフロスやウォーターフロッサーを使用する必要があったが、CameraJetではブラッシング中に歯間を自動で発見し、その場所へジェット水流を噴射する。
つまり、毎日の歯磨きの中へフロスという工程そのものを組み込もうとしている。
CameraJet最大の技術的特徴となるのが、ダイソン独自の「Gap Optical Targeting」だ。
ブラシ部分には、わずか約1mmサイズの10万画素マクロレンズカメラを搭載。
カメラが取得した映像から毎秒28枚の画像を解析し、AI機械学習アルゴリズムによって歯と歯の間をリアルタイムで識別・追跡・予測する。
しかも、単に歯間を画面上へ表示するだけではない。
カメラが歯間を認識すると、CameraJetは最短100ms(0.1秒)以内に対象位置を判断し、その場所へジェット水流を噴射する。
人間がノズルを歯間へ狙う従来型ウォーターフロッサーとは異なり、
カメラで見る
→AIが歯間を認識する
→自動で狙う
→ジェットを噴射する
という流れをデバイス側が処理する仕組みだ。
機械学習システムには、開発中に収集された約47万枚の歯科画像が使用されており、CameraJet全体では約1,600万行のコードが動作しているという。
歯ブラシという極めてアナログだった道具へ、コンピュータービジョンを本格的に持ち込んだ点はかなり面白い。

AIカメラが歯間を検出したあと、実際の洗浄を担当するのがConical Jet(コニカルジェット)だ。
一般的なウォーターフロッサーでは細く強い針状の水流を使用する製品が多いが、ダイソンはより広範囲をカバーする円すい形のジェット水流を採用した。
狭い一点だけに高圧の水流を当てるのではなく、円すい状に広げることで歯垢を広く洗い流しながら、歯ぐきやエナメル質への負担にも配慮している。
ダイソン公式では、コニカルジェットについて、ブラッシングだけでは落としきれない歯周ポケットの歯垢除去をサポートするとしている。
電動歯ブラシにウォーターフロッサーを追加するだけなら、技術的にはそれほど珍しくない。
CameraJetが面白いのは、「どこへジェットを当てるのか」という判断までカメラとAIに任せていることだ。
ここが既存製品との差別化ポイントとなる。
歯ブラシは使用中、縦・横・斜めと頻繁に角度が変化する。
そのため液体を安定して送り続けることもCameraJet開発における大きな課題だったという。
CameraJet本体には容量12.5mlのマウスリンス用タンクを内蔵。
内部にはダイヤフラムポンプと圧力チャンバーを組み合わせた「Anti-Gravity Tank(アンチグラビティタンク)」を採用している。
柔軟なシリコンタンクが変形することで気泡の発生を抑え、本体を縦向き、斜め、水平にした場合でも安定してジェットを供給できるよう設計されている。
特に奥歯を磨く際、歯ブラシは水平に近い角度になる。
通常の「容器+ストロー」のような構造では空気を吸い込んで噴射が途切れる可能性があるが、CameraJetではこの問題を独自構造で解決している。

毎回小さなタンクへマウスリンスを注ぐ必要があるとなれば、日常的な使い勝手は大きく損なわれる。
そこでCameraJetには、給水機能付き充電ドックが用意された。
歯ブラシをドックへセットすると、ボタン操作によって約3秒で本体タンクへマウスリンスを補充できる。ドックは充電器と保管スタンドも兼ねているため、使用後はCameraJetを戻しておくだけで次回の歯磨きに備えられる。
こうした部分は、掃除機やヘアケア製品でも「本体だけではなく収納・充電方法まで含めて設計する」ダイソンらしい考え方が感じられる。
CameraJetはジェット機能ばかりに目が行くが、電動歯ブラシとしてのブラッシング機構も独自設計だ。
本体にはパワフルソニックモーターを搭載し、ブラシは毎秒245回振動する。
さらにダイソンが「Variable Sonic Oscillation」と呼ぶ可変式音波振動を採用した。
一般的な音波式歯ブラシでは、ブラシを歯へ強く押し付けると一部の毛が歯面へ引っ掛かり、実際には十分動かなくなることがあるという。
CameraJetではブラッシング中に振動角度を変化させることで、ブラシ毛が止まることを防ぎ、継続的に動かす仕組みを採用した。
ダイソンの試験では、届きにくい場所において市場をリードするプレミアム電動歯ブラシと比較し、最大69%多く歯垢を除去したとしている。ただし、この数値は特定条件下での比較試験によるものとして理解しておきたい。
CameraJet専用の「Dual Bristle Brush Head」は、歯の立体的な形状に合わせた起伏のあるデザインを採用している。
内側と外側で異なるブラシ毛を使用し、内側では歯表面の着色汚れ、外側では歯ぐきとの境界付近をやさしく清掃する設計だ。
さらに各ブラシヘッドにはRFIDタグを内蔵。
本体が取り付けられているブラシヘッドを認識し、使用回数や摩耗状況を管理して交換時期を通知してくれる。ブラシヘッドは約3カ月ごとの交換を想定している。
センシティブ向けの、より柔らかいブラシヘッドも用意される。
なおCameraJetはダイソン純正ブラシヘッドでのみ正常に動作する設計となっている点には注意したい。
CameraJetではユーザーの使い方に合わせてクリーニング方法を変更できる。
用意されているのは、
という3種類のクリーニングモード。
さらにブラッシング強度についても、センシティブ/デイリークリーン/ディープクリーンの3段階から選択できる。
「毎回AIジェットを使う」のではなく、状況に応じて通常の電動歯ブラシとして使用できる点は実用的だ。
内蔵センサーによってブラシを強く押し付けすぎている場合などもリアルタイムで通知してくれる。

CameraJetには2.4GHz Wi-FiとBluetoothも搭載されており、「MyDyson」アプリと連携する。
そしてここでも内蔵カメラが活用される。
スマートフォン上にはCameraJetのカメラが撮影している口腔内映像をリアルタイム表示でき、自分では直接確認することが難しい歯や歯ぐきの状態を見ることが可能だ。
MyDysonアプリではこのほか、
などを確認できる。
つまりCameraJetは、歯磨きをするだけでなく「自分がどこを磨けていて、どこを磨けていないのか」を可視化するデバイスでもある。
口の中を撮影するカメラとなると、気になるのがプライバシーだ。
ダイソンによれば、CameraJetのカメラが作動するのはライブ映像表示時またはオートジェット使用時のみ。
撮影された画像はCameraJet本体にもクラウドにも記録・保存されず、ダイソンや第三者がアクセスすることもできないとしている。
口腔内カメラというセンシティブな情報を扱う製品だけに、この仕様を明確化している点は重要だ。
CameraJet本体の重量は230g。
バッテリーについてダイソン公式サイトでは、約10日間分の運転時間としている。別の公式サポート情報では、ブラシ+オートジェットモードの場合、満充電から最大14回の完全なクリーニングが可能とされている。
USB-C電源アダプターへ接続するマグネット式充電ケーブルにも対応し、満充電までの時間は約8時間。
さらに内蔵バッテリーは交換可能な設計となっており、ダイソンではバッテリー寿命を最長約5年としている。
高価格な製品だけに、バッテリー劣化だけで本体ごと買い替える必要がない点は評価できる。
| 項目 | Dyson CameraJet |
|---|---|
| 製品カテゴリー | フロッサー付き電動歯ブラシ |
| カメラ | 10万画素マクロレンズカメラ |
| 画像解析 | 毎秒28枚 |
| 歯間検出 | Gap Optical Targeting |
| AI | 機械学習アルゴリズム |
| ジェット | 円すい形コニカルジェット |
| ジェット反応 | 最短約0.1秒 |
| タンク容量 | 12.5ml |
| ブラシ振動 | 毎秒245回 |
| クリーニング | ブラシ+オートジェット/ブラシ/フロス |
| ブラシモード | センシティブ/デイリークリーン/ディープクリーン |
| 接続 | Wi-Fi 2.4GHz/Bluetooth |
| アプリ | MyDyson |
| 本体重量 | 230g |
| バッテリー | 約10日間分 |
| 充電 | USB-C接続マグネット式ケーブル/充電ドック |
| カラー | セラミック ウルトラブルー/セラミック ピンク |
| 日本価格 | 79,800円(税込) |
| 発送予定 | 2026年9月11日以降順次 |
CameraJetで興味深いポイントがもうひとつある。
ダイソンはCameraJet本体だけでなく、専用の歯磨き粉とマウスリンスまで開発している。
一般的な歯磨き粉は泡が多く発生するため、口腔内カメラの視界を遮ってしまう可能性がある。
そこでダイソンは、発泡剤として一般的に使用されるSLSを使用しない低発泡タイプの歯磨き粉を開発。カメラの視認性を確保しながらGap Optical Targetingが機能しやすい環境を作るという。
CameraJetは単体の歯ブラシというより、歯磨き粉、マウスリンス、交換ブラシ、アプリまで含めた「Dyson Dental System」として展開していく構想だ。
なお、ダイソン公式の日本向け情報では、専用歯磨き粉・マウスリンスについて2026年9月時点で日本未発売と記載されている。

Dyson CameraJetの日本販売価格は79,800円(税込)。
カラーは、
セラミック ウルトラブルー
セラミック ピンク
の2色をラインアップする。
ダイソン公式オンラインストアではすでに予約購入を受け付けており、9月11日以降順次発送予定と案内されている。
一般的な電動歯ブラシと比較すれば、間違いなく高い。
ただしCameraJetの場合、単純に電動歯ブラシ同士で比較するだけでは少し評価しにくい。
電動歯ブラシ、ウォーターフロッサー、口腔内カメラ、AIによる歯間認識、ブラッシングトラッキングといった複数の機能をひとつにまとめているためだ。
「歯ブラシに約8万円」と考えれば高額だが、毎日行うオーラルケアそのものを自動化するデバイスとして考えれば、CameraJetが作ろうとしている市場はこれまでの電動歯ブラシとは少し違うのかもしれない。
2026年現在、家電やガジェットで「AI搭載」を掲げる製品は珍しくなくなった。
しかしCameraJetについては、AIを追加機能として載せただけではない。
カメラで歯間を認識し、その認識結果を使って物理的にジェットを噴射する。
つまりAIによる判断が、そのまま製品の動作につながっている。
ここはCameraJetを理解するうえで重要なポイントだ。
スマートフォンアプリ上で「ここが磨けていません」と表示するだけではなく、磨けていない可能性のある場所へ機械側が直接アプローチする。
これまで人間が目視や感覚で行ってきたオーラルケアの一部を、コンピュータービジョンと機械学習によって置き換えようとしている。
掃除機のサイクロン、羽根のない扇風機、Supersonicシリーズなどと同様に、既存製品の形をそのまま高性能化するのではなく、「そもそもこの作業はなぜこの方法なのか」から設計し直すダイソンらしい製品と言えそうだ。
Dyson CameraJetは、10万画素のマクロカメラとAIによって歯間を検出し、必要な場所へ自動でジェットを噴射するという、これまでの電動歯ブラシとは大きく異なるアプローチを採用した。
見る。判断する。狙って洗う。
この3つを歯ブラシ側が自動で行うことで、これまでブラッシングとは別工程だったフロスまで、ひとつのオーラルケアルーティンへ統合しようとしている。
79,800円という価格は決して安くない。
一方で、電動歯ブラシ、ウォーターフロッサー、口腔内カメラ、AIブラッシングガイドを1台へまとめたCameraJetは、「高級電動歯ブラシ」というより、新しいカテゴリーのスマートオーラルケアデバイスとして見る方が適切だろう。
掃除機やヘアケア製品に続いて、ダイソンは歯磨きまで再設計できるのか。
2026年9月11日以降に日本で実際のユーザーへ製品が届き始めれば、79,800円という価格に見合う体験を提供できるのかにも注目したい。
本記事は、RE EARTH TV編集部がメーカー公式サイト、公式発表、取材内容などの情報をもとに制作しています。
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